「この機体は速いよ!」

長いコロナ禍の緊急事態宣言が続き、4か月もの間パラモーターによるフライトを自粛していました。まだ、11回しか飛んだことのないホヤホヤの初心者が、これだけ長く飛ばないでいるとどうなることかと心配していました。同じスクールで学んだ先輩フライヤーに声をかけてもらい、茨城県常総市大崎にある株式会社ラムエッティに向かいました。

ここの滑走路というか滑空場は、50m×25mという初心者にはとても狭く感じます。南と西側が周囲の田んぼから3mほどかさ上げされ、地表に浮かぶように見えているところから、空母「ラムエッティ」と呼ぶことにしました。長い方の南東/北西であれば良いのですが、短い方の南西/北東は25mほどしかなく北東側には3棟のプレハブ小屋が並んでいます。この日は南西か西南西でした。空母の甲板を横に使うという感じですからF35Bにでもなったつもりで頑張るしかありません。

天気は快晴で南南西の風は、風速3~4m。これ以上ないコンディションと意気揚々駆けつけました。しかし、先輩たちは「サーマルが強そうだなぁ」と不満げな様子です。ウインドソックも地面から60度くらいの角度に上がって安定しているように見えます。

飛ばないまでも時々グライダーの立上げ(ハンドリング)の練習はしましたが、約10年物のフランスAdventure製のPremium 2 Mは重く感じられて、中々うまく立ち上がってくれません。これは自分の感覚ですが、複数の先輩フライヤーも試してみて異口同音に「なにか重くて上がりにくいね。」と言います。にも拘わらず、自分が飛んでいる様子を見た複数のフライヤーによると「この機体は速いよ!」と言われてしまいます。先輩フライヤーのSさんに実際に飛んでみてもらったところ、「確かに速いですよ。」とのことです。2011年に立上げ練習を始めたときに当時のインストラクターから薦められるままに購入したものなので、正直何も分からないまま練習してきました。

そこで、フランス語と英語で書かれた古いマニュアルが奇跡的に見つかったので、約10年ぶりに改めて読んでみました。そのマニュアルによると翼幅(スパン)11.19m、翼面積26.9㎡、アスペクト比4.65となっています。スペクト比は、簡単にいうと翼の縦と横の長さの比率のようですが、正確な長方形ではないので、 翼幅を2乗して翼面積で割った数字です。ちなみに私のグライダーの数値を当てはめるとアスペクト比4.65で、以下のように算出されます。

11.19ⅹ11.19 ÷ 26.9=4.6548…となり、一般に小数点第2位まで (4.65)で表示されています。

今までのフライトは風速3メートル以上くらいの時にしか飛んでいなかったので、無風状態などではまったく歯が立ちません。先輩フライヤーが次々とフロントライズで飛び立っていく中、もんもんとして眺めているといった感じで、もう少し簡単に立ち上がるものに変えようかとさえ考え始めていました。そうこうするうちに、自分にとって最高の風が吹いてきました。そんな遅くて速いグライダーでも飛べそうです。

4か月ぶりのフライトでした。確かに地表の温度上昇による空気の乱れはありましたが、ご覧いただけるように無難な立ち上げからテイクオフにほっとしました。サーマルの様子を感じるために先輩フライヤーが高度数百メートルまで上がってみてくれましたが、低高度とさほど大きな違いはなかったようで、自分は高度30m前後で低空の水平飛行を課題として練習しました。

真っすぐに一定の高度で飛ぶことは基本中の基本でしょうが、これがなかなか難しいのです。風の流れや強弱、地表面の温度による上下動などたくさんの自然の要素に加えて、左右のブレーキハンドルやスロットルの操作が相互に絡み合って飛行環境を作り出します。知識と感覚と身体の動きを一致させるのは経験値を上げるしかないようです。本当に久しぶりのフライトでしたが、着陸を含めて巧くいきました。結局、しばらくはこのグライダーで飛ぶことを選びました。「弘法筆を選ばず」というレベルではないのですが、それを目標に経験値を上げていきます。

Happy Landing!

akira kobayashi

小林 明
Akira Kobayashi

About the Author

1953年、広島県比婆郡(現庄原市)に生まれました。趣味は、映画鑑賞、パラモーター、セスナの操縦(免許はシンガポール大使館在勤中に取得)、スキー、居合道(全日本居合道連盟五段)等です。本職は明治大学で留学や国際教育について教えています。多様な海外留学・活動プログラムを企画実施したり、学生にアドバイスすることも大切なことです。