エンジンを背負っての立ち上げ練習

エンジンを背負い、始動した状態でグライダーを立ち上げるのは、エンジンを背負わずに練習用のハーネスだけで立ち上げるのとは、想像もつかないほどの違いがある。

2、3mの風で立ち上げを練習すると、グライダーは比較的容易に頭上まであがってくる。左右のブレーキハンドルを交互に引いて調整したり、グライダーが傾く方向に移動したりすることで、ある程度余裕をもって頭上にとどめておくことができるようになる。もう少しなれてくると、フロント立ち上げでも頭上のグライダーを見ることなく、左右の動きや前後の移動がブレーキハンドルやハーネスを伝わって感覚的に分かってくる。この段階になるとカイティングが楽しくなる。五感を研ぎ澄ませて、グライダーを操作することができるからだ。

この段階に到達するのに要する時間は、人によって異なるが、練習回数によって長くも短くもできる。自分などと違って若い人なら、足腰の筋肉も柔軟で体幹もしっかりしているので、数日で上達するかもしれない。ただ、失敗に失敗を重ねないと分からないことも多いと知ることも大切だと感じるようになってきた。あまり順調だとまさかの時の対応ができない可能性もある。

カミさんの見ている前で緊張したのか、失敗!

約25キロのエンジンを背負って始動し、立ち上げの練習をすると、指先や足腰など身体で覚えたはずのグライダーの動きがまったく伝わってこない(自分の場合)。ユニットの重さを感じながら、毎秒3,000~7,000回転(メーカーにより異なる)するエンジンの振動を背中に感じる。この動画はクロス立ち上げだからグライダーの様子を見ながらだが、フロント立ち上げでは、グライダーも何も見えないこともあり、上がってきているのか、左右どちらかに傾いているのか、はたまた自分の頭上を通り越して全面がつぶれようとしているのか、まったく分からないのだ。それまでのエンジンなしの練習で体得したはずの手足の感覚がエンジンの重量と音と推力に相殺されてしまうのか、いきなり自信を失ってしまう。

クロス立ち上げとフロント立ち上げ、連続して失敗

解決方法は二つ。1つ目は、カイティングの練習を積み重ねて、感覚的にグライダーの位置に合わせて身体移動ができるようにすること。2つ目は、少々骨の折れることだが、エンジンを背負って、そしてできればエンジンをかけて、滑走練習をすること。エンジンの荷重を感じながら、グライダーの動きを手指や足腰の感覚に覚えさせるしかないように思う。ただ、自分のように夏真っ盛りの8月にやる練習ではないようだ。

akira kobayashi

小林 明
Akira Kobayashi

About the Author

1953年、広島県比婆郡(現庄原市)に生まれました。趣味は、映画鑑賞、パラモーター、セスナの操縦(免許はシンガポール大使館在勤中に取得)、スキー、居合道(全日本居合道連盟五段)等です。本職は明治大学で留学や国際教育について教えています。多様な海外留学・活動プログラムを企画実施したり、学生にアドバイスすることも大切なことです。