悲劇をどう回避するか

先日パラグライダーによる墜落死の記事が配信されました。痛ましい事故です。心からご冥福をお祈りします。

記事の内容しか情報がありませんから、第3者が軽々にものをいうことは避けるべきだと思います。しかし、同じスカイスポーツに関心を持ち、その世界に入りたいと日々練習に励んでいる者としては、一刻も早く事故原因に関する正確な情報が欲しいものです。

私が練習しているラムエッティは、茨城県常総市にありますが、今回のフライトはその西に隣接する坂東市から飛び立っています。両市の中心部は10キロほどしか離れていません。そして、事故の通報があった千葉県野田市木間ケ瀬は坂東市から利根川を挟んだ対岸です。とても他人事とは思えないので、位置関係などを地図で見てみました。

私のような新参者でも、同記事からある事実について考えさせられました。それは利根川へ墜落したことです。

あの周辺には利根川を本流とした鬼怒川、小貝川、飯沼川など支流がたくさんあります。その辺りの川幅は、一番広い利根川でも200m前後だと思いますし、その他の川幅はだいたい20~30mくらいではないでしょうか。だからエンジンが止まっても一定の高度があれば、グライダーの本来の機能で、滑空して地面に降りられるのではないかと考えました。

しかし、記事によると当時は強風などは観測されていないとのことですから、理由はそれ以外を考えざるを得ません。たまたま高度が低かったのでしょうか。例えば、200mの川幅を滑空だけで飛び越えるのに必要な高度は何メートルくらい必要なのか、考えてみました。

パラモーター専用機グライダーの最小沈下速度を1.2m/sとします。残念ながら当時の風速、風向が不明なので無風状態とします。沈下速度とは、パラモーターが1秒間に下降する速度のことですから、この場合は1分間で72m降下することになります。

300mの高度で飛行しているとすれば、真下に降りたとしても4分弱は浮いていられるはずです。実際は滑空しますから、真下に降りることはありません。滑空して前に進む速度を成人早歩きの時速6キロとすれば、1秒間に1.38m進んでいます。落下しながらでも3分ほどの間に200mを超えて移動していると考えれば、利根川を越えることができるのではないかと思います。

ただ、飛行高度、気象条件やグライダーの損傷などは一切考慮していませんから、紙面上の計算通りいくとは考えられないでしょう。従って、私のような初心者は、川や湖さらに池など水面が見える場所には近づかないことと、そうした地形のところではできる限り高度を上げることしかないように思われます。

そうそう、もう一つ大切なことを忘れるところでした。私自身、ほぼ場周飛行の訓練中なので、緊急用フロートは購入していても、装着してはいません。大崎の先輩パイロットの中にはユニットに付けているフロート以外に自分の身体にも別のフロートを装着しておられるのを拝見しました。まさに、究極の安全対策を学べて感謝しています。

悲劇の回避は様々な安全対策をすることしかないようです。

akira kobayashi

小林 明
Akira Kobayashi

About the Author

1953年、広島県比婆郡(現庄原市)に生まれました。趣味は、映画鑑賞、パラモーター、セスナの操縦(免許はシンガポール大使館在勤中に取得)、スキー、居合道(全日本居合道連盟五段)等です。本職は明治大学で留学や国際教育について教えています。多様な海外留学・活動プログラムを企画実施したり、学生にアドバイスすることも大切なことです。