ピストンヘッドに穴が?!

以前のブログ「フライト中のエンジンストップ」でいきさつを報告したが、エンストの原因については追ってということにしたままになっていました。ラッキーセブンの真逆の体験だった7回目のフライトがあまりにショッキングだったということでご容赦下さい。実は、ピストンヘッドに直1.5cmほどの穴が開いていたのです。

穴の開いたピストンヘッド

「予兆のようなことはなかったの?」と聞かれますが、正直なところ文化社会系一本で生きてきた自分には、あったとしても気づくことすらなかったというのが本当のところでしょう。バッテリー、セルスターター、チョーク、ベルト、クラッチ、配線、キャブレターと、分かる範囲で思い出しても特に異常という兆候に気づきませんでした。初爆も、エンジンのランニングテストも、アイドリングも、飛行直前のチェックで問題ありと判断できなかったのです。

消音機の塗装が変色

まず、1点目は消音機です。5回目のフライト前後からだったと思うのですが、廃棄システムの末端にある消音機の美しい赤色の塗装がマフラー接続部分から15㎝くらい変色していることに気づいてはいました。最初に気づいた時期さえ明確に覚えていないくらいですから、これが後に問題の原因の一つになるなど考えも及ばなかったのです。

変色した消音機の耐熱塗装

前日までの雨で少なからずぬかるんでいた田んぼに軟着陸し、ラムエッティの中村さんに状況を見てもらうまでは問題だということも認識していませんでした。オートバイなどのマフラーはクロムやニッケルで防錆加工がしてあるステンレスくらいの知識しかありません。ラケット120のマフラー部分は同じような加工に見えますが、消音機部分には赤い塗料が塗られているので、熱による経年劣化だろうと気にも留めませんでした。

しかし、後になってからですが、弟の手助けでその消音機を塗り替えようとしたときに、500度や600度以上の耐熱の専用塗料が必要だと知って、変色にもっと早く気づいていればと悔やんだものです。どんな小さな変化にも気を配るべきだと、その時になって分かったのです。後悔先に立たずとはよく言ったものです。

消音機の内部に均一に配置してある断熱材が、何らかの理由で排出口の方に偏ってしまって、塗料の耐熱限度を超えてしまったとのことでした。だから断熱材がない、あるいは少なくなってしまった部分が耐熱塗料を溶かすまで温度が上昇したようです。フライト前後の目視チェックだけでもある程度は回避できたエンストだったかもしれません。

2点目は、さらに深刻です。普段の目視チェックでは発見できなかった箇所に問題がありました。

キャブレターとシリンダーのプラスチック接続部品

この部分はプラスチック部品です。耐熱プラスチックといことで通常使用によるエンジンの熱で変形することは稀なようです。しかし、新品の約半値弱の中古で購入してフライトは6回ほどですから、ショックはショックでした。この部品はキャブレターとシリンダーを接続するものです。左側のキャブレターで空気と燃料が混合気となって右側のシリンダーの送られるのですが、このプラスチック部品とエンジン側の接合部分の一部が高温で少し溶解して空気が流れ込むようになっていました。

プラスチック部品
プラスチック部品の変形変色

専門的なことは何も分かりませんが、消音機の故障が原因で高温となり、マフラーからエンジン本体にまで熱が伝わり、このプラスチック部品の一部を変形させ、余分な空気が流入したことが原因ではないかということのようです。素人判断では、混合気がシリンダー内に入る直前に、より多くの空気が流入することで4%のオイルを含む混合気体燃料が薄められ、ピストンとシリンダー内部の摩擦で高温となり、シリンダーヘッドに穴をあけてしまったのだと考えています。当然シリンダー内部とピストンの側面には異常な摩擦傷が数か所に付いていました。

最後の写真では変形、変色の部分がよく見えますが、実はこれは上下を逆にして写真を撮っているので見易いのですが、この部分は下向きになっていて、オイル漏れなども確認できない状況でしたから、フライト前のチェックで見落としてしまったのです。もちろん、現在では目を皿のようにしてこのような異常がないか確認するようにしています。いずれにしても、このことが原因でピストンヘッドやシリンダー部分は新しいものと交換できました。クランクボックス部分との色が多少異なりますが、綺麗になったエンジン部分を見ると安心しています。

Happy Flight & Landing!

akira kobayashi

小林 明
Akira Kobayashi

About the Author

1953年、広島県比婆郡(現庄原市)に生まれました。趣味は、映画鑑賞、パラモーター、セスナの操縦(免許はシンガポール大使館在勤中に取得)、スキー、居合道(全日本居合道連盟五段)等です。本職は明治大学で留学や国際教育について教えています。多様な海外留学・活動プログラムを企画実施したり、学生にアドバイスすることも大切なことです。