フライト中のエンジンストップ

フライト中のエンジンストップという、私のような初心者にはショッキングな報告をしなければなりません。

実は、先月のことです。7回目のフライトでした。エンジンも快調で、テイクオフも難なくこなし、当日の目標である高度を300m以上まで上昇して飛んでみるつもりでした。

5分ほどで200mに達したので、しばらく水平飛行で遊覧飛行と洒落こもうと考え、スロットルの握りを緩めました。すぐに数メートルの下降を感じたので、200mちょうどを維持しようとスロットルをほんの少しだけ絞ることを試みました。回転数は6,000rpmほどだったと思います。

エンストから不時着まで
エンジンストップと不時着の航路

突然「カチッ!」という音がして、エンジン音が消え、ヘルメットが風を切る音だけになりました。自分は「えっ?」という感じです。フライト中にエンジンが止まったのは2度目でした。1度目はなんと初めてのソロフライトの時です。一瞬のことでしたが、その時はセルスタートのお陰で数秒後にはエンジンが再スタートして事なきを得ました。原因は、飛行中にもかかわらず、スロットルに付いている赤いボタン、そうですキルスイッチに触れてしまったのです。

今回は、リスタートするためにセルスタート用の黒いボタンを押してみましたが、エンジンがうんともすんとも言いません。すぐにエンジンの再始動は諦めました。たまたまエンジンが止まった時の高度が200mあり、向かい風が2m程度だったので、ラムエッティの練習場には十分にたどり着けるだろうと判断したのです。

しかし、その判断は間違いだったようです。想像以上の沈下速度で、練習場にたどり着く前に着地するだろうことを実感しました。ここまでくると着陸地点の選定です。すでに稲刈りも終わっているので、どこにでも降りられそうでした。しかし、その地域では前日までの数日間雨が降っており、稲の切り株のラインの間には水が反射しているのが見えていました。

不時着地点とラムエッティ付近の風向
50mほどショートした不時着地点

あとは、乾いたように見える地表面を見つけて降りるしかありません。練習場から50m手前の田んぼが耕してあり、水の反射がなかったので、その田んぼのできるだけあぜ道に近い点に降りようとブレーキハンドルをコントロールしました。あぜ道からは2、3m手前でしたが、グライダーを水平に保ち両足で✖マークのあたりに着地しました。しかし、着地した足はつま先立ちの状態で10cmほど埋まり、一歩も歩けず、そのまま両手、両膝をついてしまいました。グライダーはそのまま自分の頭上を通り越して前方に落ちました。

水が張っているという状態ではなかったのですが、耕された土は相当水を吸っていたようです。多少の水たまりは気にせずに切り株の上にでも降りた方が足をとられることがなかったかもしれません。それにしてもかすり傷もなく、装備に損傷もなく、ある意味無事に不時着できたことを良しとせざるを得ません。

練習場にいた二人の仲間が、自分でグライダーを手繰り寄せて、あぜ道にたどり着くのとほぼ同時に駆けつけてくれました。ユニットを背負い、両足、両膝、両手を田んぼの泥でぐちゃぐちゃにしながら、グライダーを運んでくれるお二人の後を歩く自分がなにやら惨めに感じたものです。しかし、それ以上にお二人の素早い支援に心が温まりました。仲間の存在は本当に有難いものです。

エンストの原因は、次のブログに紹介します。

akira kobayashi

小林 明
Akira Kobayashi

About the Author

1953年、広島県比婆郡(現庄原市)に生まれました。趣味は、映画鑑賞、パラモーター、セスナの操縦(免許はシンガポール大使館在勤中に取得)、スキー、居合道(全日本居合道連盟五段)等です。本職は明治大学で留学や国際教育について教えています。多様な海外留学・活動プログラムを企画実施したり、学生にアドバイスすることも大切なことです。