クロス立ち上げのケアレスミス

クロス立ち上げ時のケアレスミスとは言えない程のリスクを孕む動画です。

風速3m/s~3.5m/sという最高の風の中での立ち上げです。スムーズに立ち上がると期待していたにもかかわらず10秒足らずで右側ににグライダーを落としてしまいました。風は風向、風速ともにほぼ一定のようにも見えます。

何が、原因だと思いますか。絵を止めたり、戻したりして見ながら考えてみてください。

まず、立ち上げですが、良い風を受けてグライダーは中央付近から左右へと広がり、真っすぐ上に上がっています。真ん中から風を受けて上がろうとした瞬間に、それまで地面に向かって垂直に立っていた自分の姿勢が、腰を落として後傾しています。その姿勢は頭上に安定するまでキープできているようです。また、もう一つ大切なことは、肘をまげて力で引き上げようとはしていません。胸あたりで吊っているライザーに手を添えて肘を伸ばし、腰で引いています。体重が十分に乗ったことで、グライダーはスルスルと上がっていきます。

さて、ここまでは良かったのですが、後ろに3歩ほど下がった時の私の右手を見てください。なんとブレーキハンドルを取りに行くところが見えます。

クロス立ち上げのケアレスミス

立ち上げの段階で、ハンドルがどこかに絡んでいて一旦離して再び取りにいったか、あるいは両方のAライザーを右手でもって立ち上げているので、グライダーが頭上に上がった段階で、ブレーキハンドルも一緒に離してしまったかのどちらかでしょう。記憶は定かではありませんし、ビデオを見ても確証を得ません。

そのために、慌てて取りに行ったときは、頭上のグライダーが自分の身体よりも少し前に進んだことで、ラインの張りが緩み、リーディング・エッジが崩れそうになったのです。遅れた右手のブレーキ・ハンドルをオーバーコントロール(必要以上にブレーキハンドルを操作すること)で引きすぎ、その反発で左も大きく引き下げたことが右への落下の原因とみるべきでしょう。

ともあれ、最大の問題は、立ち上げ前にライザーの状態やブレーキハンドルの縺れなどを確認せず、グライダーが頭上に来てあわてて手を伸ばしてからのオーバーコントロールでしょう。恥ずかしい限りです。

小さなミス(原因)が大きな事故(結果)を生むということの最たるものです。皆さんにはこうしたケアレスミスをできるだけ少なくして、楽しい練習、快適なフライトを経験して下さい。

akira kobayashi

小林 明
Akira Kobayashi

About the Author

1953年、広島県比婆郡(現庄原市)に生まれました。趣味は、映画鑑賞、パラモーター、セスナの操縦(免許はシンガポール大使館在勤中に取得)、スキー、居合道(全日本居合道連盟五段)等です。本職は明治大学で留学や国際教育について教えています。多様な海外留学・活動プログラムを企画実施したり、学生にアドバイスすることも大切なことです。